俺が始めて事業をマンハッタンで起こした駆け出しの頃、
ここでのヒーローはまさにドナルドトランプだった。
彼はニューヨークの不動産王と呼ばれ40代半ばににして二枚目、
スポーツマンで二度目の奥さんのイバナ夫人はミスコンで入賞暦もある
スキーの選手。
五番街のティファニーとなりの高層ビル「トランプタワー」を持ち最上階の
天井の高さが20m位ある継ぎ目無しのペントハウスと郊外のとてつもない
屋敷に住んでいる。30人くらいの使用人とでかい階段の前で撮った写真を
見た事がある。
トランプタワーは21階から上が高級マンションでスピルバーグも住んでいる。
自家用ジェットはアラビア人武器商人のカショギと同じくボーイング727の
旅客機を改造したもの。
自家用ヨットはドナルドプリンセス号と言い、長さが50m位ある大型船でエレベーターが二基もついているホテルみないな船。
街には彼を使ったCMや広告があふれていた。とにかくアメリカンドリームそのものだった。
いつぞやアトランティックシティのカジノで遊んだ後、海岸で泳いでいたら
突然巨大な真っ黒なヘリが飛立った。黒い機体に赤の文字ででっかく「TRUMP」と
書いてあった。彼はここアトランティックシティにもカジノホテルを持っていたのだ。
正に地上の幸福の全てを手に入れた男だった。
トランプは以前話した俺の好きなエドワードコッチNY市長と凄まじい争いを繰り広げて
いた。
原因は42ストリートのグランドセントラルステーション駅の廃墟になっている地域を
トランプが開発申請を出したら市はこのビルはランドマークで保存地域だから
許可しなかった。
そこでトランプはニューヨークタイムスの1面の枠を買い取って意見広告を出したのだ。
「コッチ市長は42ストリートを蘇らせる計画を意図的に妨害している!」と。
トランプは見事世論を操り遂には格安でここの開発権を得た。
そして建設したのが今のグランドハイアットホテルなのだ。
トランプは同じ手で次々と斬新な手法でマンハッタンの廃墟の開発を続けた。
とにかく莫大な利益をあげた。
トランプのビルは全てがとにかくすべてが金ピカなのだ。
金が大好きなのだ。
そしてマンハッタン最後の開発地域であるウェスト地域の鉄道操車場で
の権利を得た。
彼の勢いはとどまる事を知らなかった。
しかし操車場開発から運命の歯車は狂い始めた。
事業の度重なる失敗。
イバナ夫人との離婚。そして離婚訴訟。
さらに追い討ちをかけたのが不動産不況。
そしてついにトランプは破産に追い込まれた。
全ての財産を手放し夫人を失い船は世界中に売りに出された。
世界中の金持ちに招待状が届きこの船を買いませんかと通知したんだ。
まさに若き英雄の偶像は落ちた。
しかしその後彼は見事に復活を遂げた。
本業の不動産事業が再び盛り返したのだ。
そしてテレビ番組にも出演して人気者になる。
NBC「The Apprentice」(実習生)という番組。これは、16人のApprentice(実習生)たちが、「トランプ氏の経営するベンチャービジネスを任される”選ばれたひとり”」になるべく、試練を受ける番組。25万ドル(2800万円)の年収も約束されている。
候補者はリーダーシップやビジネスセンス、チームワークなどによって毎週選考され、誰かが「脱落=クビ」になっていく仕組み。もちろん選考のキーパーソンはトランプ氏自身。
彼は全米の人気者になっていった。但し英雄とは言いがたいけど。
そして今年10月21日(ブルームバーグ):ニューヨークの不動産王、ドナルド・トランプ氏(58)が経営するトランプ・ホテルズ・アンド・カジノリゾーツは21日、社債保有者と約4億ドル(約430億円)規模の債務削減で合意したのに伴い、チャプター11(日本で言う連邦破産法11条9に基づく会社更生手続きの適用を申請すると発表した。
発表資料によると、社債保有者は債務を現金7400万ドル、新たな社債(12億5000万ドル相当、金利8.5%)、普通株(3億9500万ドル相当)と交換する。同社の債務残高は現在18億ドル。
彼は再び二回目の破産を経験するのだ。
実は彼が絶頂の時、ロッキー青木さんの紹介で握手して挨拶した事があった。
そしてその後、白血病募金のためロッキーさんと再びトランプのオフォスに
訪ねた事もあった。
確か3人で撮った写真も撮ったはず。見つけたらまたお見せします。
彼も当時は成功者だけれどもイメージとは違い、とても物静かで
どこか暗い感じのする男だった。
成功者特有の俺のハートを突き刺すような魅力が感じられない男だった。
でもアメリカで最も有名な実業家だったんだけどな。
それは彼が無一文から始めたのではなく父親の財産の踏み台もあった
からかもしれないし、どこかビジネスのやりかたも賛同できなかったからかな。
その点でいえばロッキー青木さんやCNN創業者のテッドタナーの方が
遥かに魅力があった。
でも二度の失敗を経験して彼は当時よりも人間を磨いてきてるだろうから
今は変わったかもしれない。
日本は会社を倒産させ破産者になったものには凄まじい冷たい視線を送るだろ。
まるで人生の落伍者か犯罪者みたいに見る。
それは違うだろうって言いたい。チャレンジャーが今失敗したってそれはまだプロセスだろう。
何度でもやり直しして成功できるチャンスはある。
失敗からは多くの事を身体で学んでいる。
しかし日本ではその復活の芽をまず銀行が潰す。一切の応援をしないからだ。
だから日本では一発で当てた事業家だけが注目を浴びてる。
でもアメリカの成功者は過去10回の失敗を繰り返してるなどザラだ。
そして失敗を繰り返している途中でもチャレンジャーとして評価される。
俺は危険を恐れて冒険をためらう男よりも挑戦し失敗し挫折した人間が好きだ。
今俺の会社は会社や事業に失敗したり破産した人間も頑張ってくれている。
失敗していても輝く物を持っていれば俺は率先してそんな人間を雇う。
トランプよ、再び三度蘇れ!不死鳥のように