NYオフィスで東京との連携で仕事を進める時はとにかく夜が遅くなる。
週末は特に日系企業は日本へパッケージを送るのに金曜日に送り
月曜日には日本へ届いている状態にしたいから必死だ。
アメリカ企業でも9時から5時までしか働かないのは普通のサラリーマンで
ホンモノのエイクゼクティブたちはめちゃめちゃ働く。
だから俺達も先方の時間が取れない時は夜の11時に訪問する事もあった。
まだ駆け出しの頃、役員会で説明するために呼ばれていた。控え室の部屋で待機する。
暫くすると秘書が迎えにきて役員室に通された。約10人の年配の白人が
並んでいる。
あの時はまだ駆け出しでNY駅伝マラソンの説明とスポンサードを
頼みに来たんだ。
しかし何か雰囲気が悪い。俺の議題の前の別な案件で意見が交錯して
ヒートアップしていたらしい。
フィリップと用意した書類を配りつたない英語で説明を始めた。
俺は駅伝マラソンの歴史、駅伝の日本での人気度、背景、などを
話していたら突然一人の役員が
「ゲット・カット・ザ・ポイント!アイ・ディデュント・クワイト・キャッチ!ジャパニーズボーイ」
(要点を言ってくれ。能書きはどうでもいい)
皆が笑った。
しまった、だらだら話しすぎた。すぐに値段とその費用に対し得られるスケールメリット
だけを話して後は資料を読んでくれるようにたのだんだ。話し終えて
退席した。
10分ほど待って秘書が「ユー・ガッタ・ディール!」(取引成立よ)って知らせてくれた。
すぐにまた役員室に通され細かい条件が詰められた。
日本は会議の前に根回し、手を回し、さらにだらだら会議で時間を無駄に使う。
結論を後延ばしにしてお金の話はすぐすると卑しいので一番あとに
こっそりと付け加えるように値段を言う。
アメリカは余分な話は全部カット、資料は配布してあるので改めて読み上げて説明
する必要はない。
効果と費用を説明してOKなら条件をつめてすぐ契約だ。
日本はまた契約でも口頭OKをもらったら明日にでも契約書をお持ちしますという。
でもアメリカのトップセールスは例え手元になくてもその日中に契約書を取りに帰り
その日のうちに契約してしまう。
というのも人間誰かに余計な事を言われたり落ち着いて考えてみたりして
気が変わったりするからだ。
あの頃は毎日が毎日が勉強だった。日本とアメリカのビジネス習慣の違い、
カルチャーギャップが凄かった。
しかし笑われても恥かいてもそのギャップが楽しくてたまらなかった。