アメリカ合衆国西南部、ニューメキシコ州北部。
多くの牛、馬、ヒツジなどが放牧される丘と小川の大地。
この広大な地域には、当時、専制的な力をふるっていた王がいた。
それは一匹の灰色狼だったのである。
俺は幼稚園の時に見たこのディズニー映画「狼王ロボ」を見て
心から感動して涙したのを覚えている。
土地の人びとは、力と知恵を併せ持ち、並み外れて強い集団を軍隊のように統率する彼に畏敬の念を込めて「王様ロボ」と呼んだ。
ロボとその群れは毎日のように牧場の家畜の牛やヒツジを襲った。
ロボは少し放れたところにある崖から
ブランカとほかの仲間が、目ぼしをつけた若い牛を群れから切り離そうとやっきになっているのを見ている。
そのうちにロボは、部下たちのやりかたにしびれをきらしたようだった。
地面をゆるがすような咆哮をあげ牧牛の群れへまっすぐに突撃した。
ロボは雌牛の首をくわえ、ありったけの力で急にうしろへ引いたので、雌牛はすぐさま地面にたたきつけられた。その力は相当なものだった。
牛は頭を下にしてひっくりかえった。
ロボには高額の賞金がかけられ、オオカミ狩りの経験を持つシートンにも白羽の矢が立った。
しかしロボは悪魔のような狡知を発揮し、人間たちの試みを、
罠であれ毒薬であれ、ことごとく見破り退ける。
あらゆる術策は、尽きたかに見えた。
しかし、シートンは群れで唯一の雌オオカミ、そしてロボとつがいをなすブランカに目を付け、彼女を捕えて殺すことに成功する。
いなくなったブランカを探した末、ブランカのにおいのついた罠にかけられてしまうのだった。
妻、自由、誇り。
すべてをうばわれ、鎖につながれた王者は、人間から与えられる一切の
餌を口にすることなくある朝にひとり、息を引き取っていた。
ロボは死んだブランカの隣りに埋葬され、名もないカウボーイの言葉に送られる。
「ほれ、お前はこいつのそばへきたがってたんだろう。
これで、また、いっしょってわけだ」
狼は虎のように発情期に限って一夫一婦制をとるようなものでもなく、ライオンのように一夫多妻制でもない。
生涯を通しての一夫一婦制なんだ。
狼は、親戚兄妹で群を形成し、助け合って生きていく。
交尾を終えた2頭は仲むつまじく一生を共にする。
研究によると交尾の際にある種の化学物質が交尾の際に脳内に分泌され、相手を特別視するようになるそうだ。
人間の脳にもこの物質はあるという。
愛情を永続的なものにする化学物質である。
狼は「初恋の人と結ばれて一生一緒に助け合って生きる」という特質を持った個体が生存競争に勝ち残り続けてきた種族である。
その狼から作られた犬が「忠実な家族の一員」として人間に生活を共にする動物として受け入れられてきたのもまた自然なことだろう。
「狼男だよ」のプレイボーイな狼男は誤解を与える。
「送り狼」とはか弱い女性を家に送るふりをして手をだそうとする
男をさす。
しかし本来の「送り狼」の意味は
山で遭難した人間を人里まで無事に送り届けた事が度々あったので
その言葉はそもそも生まれたのだ。
歴史を見ても狼は家畜は襲っても人間を襲った記録は実は無いらしい。
童話や夜の遠吠えで不気味に感じた人間の偶像なんだ。
事実インドやスマトラでは親とはぐれた人間の赤ちゃんが
狼に育てられて成長したのを発見された事例は数多くある。
物語どおりなら他の動物なら軽く食われていただろう。
狼の姿、生き方が俺はとても好きだ。
狼の遠吠えがなにより好きだ。
マイケルジャクソンの「スリラー」の遠吠えの録音が最高だね。