パソナの南部社長がNYで新たなビジネスを展開した。
アッパーウェストで「OISHII」 オイシイってお好み焼屋を
オープンすると言うのだ。
たまたま工事現場を通りかかってみると場所は人が多く
行き来する一等地だった。
二階建ての吹き抜けの大型店舗で真っ白な白壁がとても
綺麗な店だ。
大々的に宣伝をしてかなりのマスコミがオープニングには
集まった。
行列は2ブロックにも伸び一時間待ちの大変な賑わいだった。
なんとこの行列にあのオノ・ヨーコがいるのを知人が見た。
彼女がジョン・レノンと住んでいたあまりにも有名なダコタハウスは
目と鼻の先だ。
俺もすぐにでも食べに行きたかったが行列する暇がなかったので
オープン後ひと月たってから食べにいったんだ。
やはりまだ人気は高く15分は待たされたな。
メニューにはお好み焼きの中身により名前が「TONO」(殿)「HIME」(姫)
「SAMURAI」(侍)「NINJYA」(忍者)ってあるんだ。
中身は肉玉、イカ玉、エビ玉、ミックスなんだ。実に笑える。
目の前の鉄板で焼き上げるスタイルではなく、ウェイトレスが
注文を受けて奥の厨房で焼き上げてテーブルへ持ってくる。
ところがこれが実に遅いのだ。なんと注文して出てくるまでに
40分もかかるのだ。
お好み焼きはほんとにうまかった。但し俺はお好み焼きの
まずいのに遭った事がないくらい好きなのにましてここは
マンハッタン。うまくない訳がない。
値段はお好み焼一枚で大体が$15から$20だ。
前にも書いたがこれは高い。
日本のお好み焼屋で青山や白金ではこれぐらいするだろうが
アメリカではお好み焼きはピザの感覚なんだ。
ピザだけにこれだけ並びそしてテーブルで待たされそして
この値段はどうなんだろうと思った。
実はこの店以前にも日本人によるお好み焼屋は何度か進出を
果たしているがその何れも撤退を喫している。
日本の物がアメリカで大ヒットして英語にもなったソイ・ソース(醤油)
、トーフ(豆腐)、スシ(寿司)。
逆に健康志向に便乗しようとして進出に何度もチャレンジしながら失敗したのは
海苔、納豆、味噌だ。
大手海苔の会社の白子海苔の社長と話した時、それを聞いた。
あの黒い物体がアメリカ人には気持ち悪いらしい。
海苔巻は食べるのに実に不思議だ。
ある関西の日本酒の会社の社長が「福寿」という有名な製品を国内で販売して
いた。
そして一大決心をしてワンカップにしてアメリカのスーパーで販売した。
しかし売上はさっぱりだった。
社長は思い切って渡米しアメリカのスーパーの店頭でハッピを着て直接
販売キャンペーンの指揮を取った。
そして買い物に来る主婦に勧めたのだ。「この福寿ってお酒ほんとうにおいしいんですよ。
料理にも使えるんですよ」と英語で片っ端から話しかけた。
ところがどの女性もどの女性もその社長やスタッフを避けるように逃げていくのだ。
それも製品名を聞くと顔が真っ赤にしていなくなる。
理由がやっと分かった。「福寿」の英語の表記の「FUKUJYU」が
凄まじく卑猥な言葉に発音がそっくりなのだ。
もう後の祭りだった。全米に卸した全製品のラベルにこれを貼ってしまっている。
もう取り返しがつかなかった。
商品はぜんぜん売れずアメリカ進出は失敗に終わった。
話は戻るがある日パソナNYのT社長から遭いたいと電話が来た。
用件はOISHIIが客が激減し大変な事になっているとの事なのだ。
そこでなんとか建て直しをしたいのだが店をロッキー青木さんに
見て問題点を指摘してもらえないだろうかとの事だった。
彼は俺がわずかばかりの親交が俺とロッキーさんにあるとの事を
聞いてきたらしい。
俺はすぐにロッキーさん話してみた。彼はもうすでに食べに行っていた。
そしてやはり俺と同じ問題点を指摘した。
それをT社長に伝えた。
その後音沙汰はなかったが1年後店の前を通り過ぎた時、店は閉店していた。
あの喧騒に包まれた白い豪華な店は汚れ廃墟になっていた。
ひとつの志がまたひと時の栄華を味わい、そして消え人々の記憶からも姿を消す。
そんな事を繰り返す街、マンハッタン
これもまた現実だ。