売場面積世界一と言われるデパートのメイシーでバーゲンのシャツを
買いこんで下りのエスカレーターに乗った。ここのエスカレーターは木で
できていてゴトゴトと音と振動が伝わってくる。
やがて特別天井の高い一階のフロアーが広く見渡せる。
パヒュームの香りの空気のプールに浸されるように感じる。
個人的にはこの香水の香りがすこぶる苦手なのだ。
しかしこのフロアーの華やかさはなぜかとても魅了される。
この一階は化粧品売場がほとんどを占める。全米の都市にデパートは
数あれど世界の化粧品会社はマンハッタンのこのメイシーの一階に店舗を
開く事を最高のステータスとする。
パリのプランタン一階、ロンドンのハロッズ一階と並び称される。
後発のトップグレードと呼ばれるロード・アンド・テイラーもサックス・フィフスも
ブルーミング・デールもニーマン・マーカスもメイシーのステータスにどうやっても
勝る事はできない。
そして東京にも世界に称される世界中の化粧品メーカーが何とか何としても
店舗を確保したいデパートがあるのを知っているだろうか。
それは新宿の「伊勢丹」の一階なのだ。ここに店舗を持つ事は世界から
一流と認められる事なのだ。
日本橋の「高島屋」でもない、日本橋や銀座の「三越」でもない。
新宿の「伊勢丹」なのだ。俺はそれをNYで知ったがここでも日本でも
理由を聞いたがその訳を答えられるものは誰もいない。
エスカレーターからふと見渡すと一階のある広場に凄まじい人だかりがある。
キュリオス(好奇心)が強い俺は理由を知って驚いた。
ライザ・ミネリがイベントを開いていたのだ。。
父は監督のヴィンセント・ミネリ。母は女優ジュディ・ガーランド。
2才の時、母の出演映画に出演。14才の時、ニューヨークで舞台デビュー。
68年に映画界入りし、72年「キャバレー」でアカデミー主演女優賞受賞。
普通の人にはなじみは薄いかもしれないがここマンハッタンの人々にとっては
ライザ・ミネリは特別な存在なのだ。
マンハッタンのマインドとも言われる。なぜか?
あの「ニューヨーク・ニューヨーク」にロバートデニーロと共演し、映画の中の
この唄が大ヒットしたからだ。
俺がこの街にもっともピッタリとくる曲をあげろと言われれば迷うことなく
「ニューヨーク・ニューヨーク」をあげるだろう。
マンハッタンの冬の夜景を見ながらイーストリバー越しにブルックリンハイツで
ウォークマンで聞いたこの曲は心が悲鳴をあげるほど感動したものだ。
あのライザミネリが目の前に立ちそしてなんとナマで「ニューヨーク・ニューヨーク」を
聞く事ができた。自分の幸福さに俺は感謝した。
高校時代の「キャバレー」でアカデミー賞を受賞した頃から雑誌のスクリーンを頁を
めくりファンだった頃に思いを馳せた。
夢が想像が憧れが現実になる街、マンハッタン、ステート・オブ・マイ・マインド。