マンハッタンの日本人は大きく二つに分かれる。
日本企業の駐在員として日本から派遣されてる人間たち。
それと多いのが一旦日本で就職してしばらく働いた後
人生を変える意味でこちらの英語の語学学校へ留学してくる女性だ。
英語学校は当然アメリカ人はいない。
プエルトリカンやメキシカンや中米が多い。
そして彼女たちはそれらの国の連中と机を並べて勉強していると自然と
いい仲になってしまう。そして一緒に住み始める。
彼女達は学生ビザで来ているので労働は違法。しかし
観光ビザで入国して違法滞在している人間同様に違法に働いて生活費を
稼ぎ出す。連中もはなっから勉強などする気は無い。アメリカへ来る事が目的なのだ。
同棲した相手の男は日本女性をまずドラッグ漬けにする。最初はマリファナなど軽いやつからだ。マリファナ自体はヘビーなドラッグではないが麻薬の入門篇になるのだ。
そして違法労働して働いた金は男に吸い上げられる。
そして浮気、暴力と典型的な転落コースをたどる。
以前会社勤めしていた頃のOLと偶然NYの路上で再会した事があった。
しかし彼女は以前の彼女ではなかった。
もうどん底に落ちていた。一目見てジャンキー(麻薬中毒者)だと分かった。
手を何度も差し伸べたが意思の力が弱く救おうにもどうしようもなかった。
このビザ無し違法労働は過酷だ。安い賃金で日本食レストランのウェイトレスか
厨房の皿洗いや客が食べたあとの片付けだ。
移民局の抜き打ち捜査がレストランに入ったらいきなり逃走する。
ほんとに犯罪者と変わりない。
もし逮捕されると刑務所には入れられないが強制送還、二度とアメリカへは
入国できない。
だが彼らにもひとつの光はある。グリーンカード(永住権)を申請しひたすら順番を待つのである。
3年から4年待つとグリーンカードが手に入る。これさえあればアメリカ人と同じように
ちゃんとした仕事を探す事ができる。
過去の違法滞在の罪もチャラになる。
しかしその待つ間は絶対移民局から逃げなくてはならないし捕まったらグリーンカードはパアだ。
だから違法滞在者にとってグリーンカードは憧れなんだ。
俺はアメリカへある程度の設備投資をしているる投資家のE2ビザだった。
審査はかなり厳しいが外国人が取れるビザでは最高のビザだ。
違法滞在者が狙うもうひとつの方法はアメリカ人と結婚すること。
そうすれば自動的に国籍やビザが手に入る。
だからアメリカ人で金を払って偽装結婚をしてくれる奴もいる。
それを仲介するビジネスもある。
ところが移民局もバカじゃない。夫婦になって永住権を申請してきた人間を
面接して審査する。それも夫婦別々にだ。
質問事項は二人はどこで知り合ったか?
食べ物は何が好き?
寝室の壁の色は?
ハネムーンはどこ行った?
ハナムーンの時の写真を見せてくれ。
夫婦なら当然答えられるだろう質問を次々出してこの夫婦がホンモノかどうか
審査するんだ。
しかし受ける方も大したもの。その質問集を予め用意してロールプレイングで
特訓してくれる業者もあるんだ。
写真や付き合っていた頃のラブレターも全部ニセモノを作ってくれる。
写真はコンピューターで合成して作る。
二人でハワイやタヒチに行った写真ができる。
全く大したもんだ。それで審査を通って数年してたとえ離婚しても永住権は
残るのでそれでいいのだ。偽装結婚してあとは別れればいいのだ。
世界中の連中がそこまでしても住みたい国なのだ。
日本本社から来た駐在員とは別にNYの現地採用の社員を採用する事がある。
通称ローカル社員と言う。ローカル社員には日本人も多い。
しかしその本社の駐在員はローカル社員を凄まじく差別するのだ。
社宅も給与もオフィス環境でも全てだ。同じ日本人なのに。
NYで思うのはなぜ日本人はどうしてこう組織とか肩書きにこだわるのだろう。
パーティーに来ている日本人を見ていてもそう思う。
彼らはまず自己紹介は○○株式会社の佐藤といいます。○○商事の鈴木といいます。
○○大学の研究室から来ている田中といいます。とまず組織や会社を最初に言う。
そしてすぐに名刺を渡そうとする。
アメリカ人なら「ジョンです。エンジニアをしています」「ロバートです。鉄鋼のセールスをしています」「スミスです。バイオの研究をしています」となる。
まず自分ありきなのだ。
名刺はある程度話してから交換する。
日本人は序列が大好きだ。NYでも皆で食事するときは上座の譲り合いから必ず始まる。
宴会や接待は必ず日本料理屋でやり流れて日本人ホステスばかりいるクラブに行き
日本語でカラオケをする。
住居は家族持ちなら郊外の日本人が集まって住むヨンカース、スカースデール、
アービントン、フォートリー等の高級住宅地に集中して住む。
テレビの日本語放送のバラエティ番組を見て日本語の新聞を見て子供は
日本人学校へ通わせる。休みは日本人どうしで集まり日本語のビデオ鑑賞会を開いたり
食事会をする。
はなっからアメリカ社会へ溶け込もうなどと言う気持ちがないのだ。
だからアメリカの文化も習慣も理解できないし英語も上達しない。
駐在員の奥さんが日本へ帰国する寸前、あまりにも英語ができないで帰るのは
カッコ悪いとNYにあるNOVAに駆け込んで特訓を受けたりするんだ。
よくテレビドラマでかっこいい男がNY帰りと言う事で女性社員から
憧れの目でみれられるシーンがよくあるが
彼らのNYでの実態を見れば見た目ほどかっこよくないのがわかるよ。
これもまたNYの日本人の現実なんだ。
同じNYに住む俺とでは全く違う世界に住んでる連中なんだよな。
海外駐在帰りのサラリーマンは思うほど現地ではかっこよくないよー!
俺はマンハッタンではなんかなりふり構わず、
地面に這いつくばるようにして働いたぜ。