1979年作品 主演 沢田研二 菅原文太 池上季美子
長谷川和彦監督
中学校の物理教師が東海村の原子力発電所からプルトニウムを盗む。
ボロアパートの自分の部屋で本を読みながら原爆の製造に取り掛かかり
苦労の末に完成させてしまう。
そして原爆をネタに政府を脅迫する彼は奇想天外な要求を次々と突きつける。
プロ野球中継を終わりまで見せろと要求したり、ローリング・ストーンズの日本公演を要求する。
絶対的な力を手に入れた犯人の要求が小市民的なものだったりするのが実に楽しいし
危険な犯罪者であるがどこか憎めない。
チンケな作品が多い日本映画の中、珍しくスケールが大きく豪快なアクション大作。
長らく廃盤になっていたのが根強いファンの要望によりDVDで復活した。
太陽を盗んだ男
天才的な科学者が大きな設備で原爆を作るのではなく、中学の化学の教師が
自宅のオンボロアパートで本を読みながら商店街の金物屋とかで買ったボウルを使い
ビニールテントを張って小さな炉を買ってプルトニュウムを精製するのはとにかく面白い。
この気軽さが逆に恐怖を煽ってくる。
液体プルトニュウムさえ入手できれば原爆がこんなに簡単に作成できるとは
聞いた事はあったが映画ではその過程を詳しく細かく描写してくれてるのはリアリティが
ありテロリストでも無理なく製造できる警告を発しているようにも伝わって来る。
飼っていた猫がビニールテントに入り込んで被爆してしまいスローモーションで
ふらつき息を引き取っていく様は放射能の恐ろしさを思い知らせてくれる。
北朝鮮が核ミサイルを持つ事で実はそれを一番恐れるのは直接打ち込まれる可能性の無い
アジアの国々だと言う事実を知っているだろうか。
以前日本の本土の上空を越えて太平洋に北朝鮮のミサイルが落下した事があったが
もしミサイルが日本本土に落下した場合、
日本は核武装して対抗する可能性があるからだ。
今の日本の技術力だと一週間でミサイルに搭載する核弾頭を開発できるらしい。
日本の核武装こそアジアの国はあの大東亜戦争の悪夢を彷彿させるのだ。
抽出したプルトニュウムの破片と原爆の材料を政府に送りつけ、専門家が分析して
原爆が本当に製造されているのが明らかとなる。
沢田は要求を突きつけるが実にたわいも無い要求だった。
野球中継の延長やドラッグで入国禁止になったローリングストーンズの
武道館での日本公演だ。
まさに世論を代弁するような痛快な要求だった。
ラジオ番組に電話をかける沢田とDJ池上季美子との不思議な好奇心とも
エールとも取れる人間模様と菅原文太の警察の捜査はどうも
しっくりこないがまあいいか。この二人の演技はぜんぜんだめ。
菅原文太は「仁義なき戦い」のやくざもこの映画の刑事も皆同じ
ワンパーンの演技。
けったくそ悪そうに話す話し方、眩しそうに目をいつも細めて眉間にいつも皺を寄せて
いる顔は本人はそんなに気に入っているのかな。
池上の巻き添えを食って死ぬシーンも中学校の学芸会を見てるみたいで
見てるこちらが赤面してしまう。
そしてやがて沢田自らも製造過程で被爆しているのが自分で分かる。
髪が抜け歯が抜けてくる。
そして自分の余命がいくばくも無い事を知ってしまう。
そして最後のやけのやんぱちな行動に移る。
権力を翻弄し政府を振り回す様子は痛快だ。
やがて核の放射能の恐ろしさを思い知らせてくれる。
冒頭の中学校の観光バスをバスジャックして天皇に会うために
皇居に突入するシーンは面白い。
この犯人の初老の男が実によかった。
沢田研二快心の一作だ。