ニューヨークでは市の計らいで無料のコンサートやオペラが
セントラルパークの広場でよく開かれる。
それもけっこうな大物がくるんだ。ニューヨークフィルのコンサート、
チェリストのヨーヨーマ等は圧巻だった。
昼間に入場券を配るのでそれをもらって夕方から行くんだ。
ある日ロッキーさんからオペラに行こうと誘われた。
夕方会場で待ち合わせしたら既にロッキーさんは先に来ていて
俺のために席を確保していてくれて俺の姿をみつけたら手を振って
呼んでくれた。
題目は「マダムバタフライ」蝶々夫人だ。ロッキーさんが俺に台本をくれた。
オペラはイタリア語ですすめられているが台本は英語。
ロッキーさんはオペラが大好きでカメラと双眼鏡を交互に見てさらに台本で
チェックしながら時々俺に話しかける。
野外オペラでも凄まじい迫力だ。空は暗くどんよりしてきた。
今にも降り出しそうだ。
ストーリーは有名なのでピンカートンらしきもすぐに分かる。
物語が佳境に入ってきてオーケストラが音響がピークに達したその時、
なんと雷鳴が轟き稲妻が光った。それも空が割れてしまうのでなないかという
程の光と音。セントラルパークは日比谷公園の15倍の広さがあるが
その周りを高いビルが取り囲んでいる。
音はそのビル街に反射して反響しているのだ。
オペラのその時の場面はちょうど蝶々夫人がピンカートンの裏切りを知るところ。
なんと偶然の自然現象がオペラの場面とぴったり一致しているのだ。
こんな偶然があるだろうか。感動の嵐だった。
しかし数分後ついには天に穴があいたような雨が降り注いだ。
ズブ濡れになって演じていた俳優も観客もついには限界で
オペラの中止が発表された。
今まで多くの舞台、ブロードウェイは見てきたけどこれほど思い出深いオペラは
なかった。