ある日、ロッキーさんに頼みごとがあるからと言われベニハナに向かった。
紹介されたのは白人の若い男。
ロッキーさんの話によるとこの男は立った今カナダからアメリカへ不法入国してきたらしい。
よく見ると手足が細かい傷だらけだ。
彼の仕事はサーカスのオートバ乗りで、ジャンプしたオートバイで横に並べたバスを飛び越える世界記録保持者というのだ。
彼の夢は世界中でその技を披露する事。ところが彼の父親は実は列車強盗の罪で服役中。
そしてカナダの警察は彼のオートバイの特技で父親を脱走させるかもしれないという事で
徹底的にマークされているらしい。国外に旅行すら難しい。
そこで遂に夜、国境付近の崖からオートバイでジャンプしなんとパラシュートで着地して
そこからアメリカへ密入国したらしい。
こんな技もショーでは今まで何度もやったらしい。
またただバスを飛び越えるだけでなく爆発炎上しているバスを飛び越えるという。
その飛び越えている瞬間の写真も見せてもらった。
ロッキーさんの頼みとはパスポートとビザはロッキーさんの方で
面倒見るから俺にそのスタントショーを日本でやれるように
あたって見てくれないかという事だった。
その晩、俺のマンションに彼を泊めてやったのだがあの温厚そうなカナダ政府も
かなりきつい締め付けをする事が肌でわかった。
俺もかなりバイクは詳しいが彼の運転テクニックはハンパじゃなかった。
夜も更けるのも忘れバイクの話で盛り上がった。
すぐに日本でのイベントプロデューサーに電話をして彼の事を話してやった。
でもこんな密入国した人間が果たして日本に入国できるのだろうか。
半年後、偶然見たスポーツ新聞に彼が出演している広告がでていたのを見つけた時、
何か嬉しかったな。
しかしロッキーさん絡みの話はいつも何か面白い。