人材紹介業とはエンプロイメントエージェンシーという。
俺がNYで一番最初に始めた仕事がこれだった。
東京でのこのビジネスの経験はあったがここでは人材確保も
クライアント獲得も全くの初めてだ。
競合他社のリストを作り、自分のレジェメ(履歴書)を作り
片っ端から休職中の人材のふりをして周った。
登録用紙フォームの入手、事務所の様子レイアウト、
面接官のインタービュー内容を全部メモする。
これを50社くらい繰り返すとこれはいい、これはだめだって
ところが見えてくる。
人材募集の広告をうってみていろんなテストマーケティングしてみて
分かった事は一番企業にとって欲しい人材は
英語と日本語ができる日本人とアメリカ人だった。
特に日本企業の駐在所の場合、セクレタリーを雇う場合でも言えるのは
白人のブロンド女性を雇いたがる傾向にあること。
人材会社に平気で「白人女性、ブロンド、青い瞳」なんて要望してくる。
一歩間違えば訴訟問題になる恐ろしさをぜんぜん分かってない。
さらに白人は概して賃金が高い。
日本企業の現地法人は男性社員でも現地採用の人間と本社から駐在している
人間とのすごい差別感が存在する。
本社の人間がすごく偉いと思っているんだ。
本社の連中は役職は部長なのに英語で名刺に「バイス・プレジデント」
ってかかれると俺は副社長になったって喜ぶんだ。
でも実際はこれは日本でいう部長クラスの肩書き。
ホンモノの副社長は「エクゼクティブ・バイス・プレジデント」とついて初めて
ホンモノなんだ。
それとたまに英語の名刺の肩書きに「パートナー」とある事がある。
日本人からみるとなんじゃろうって思うだろうが実はこれは株主と社長が
別の場合は「パートナー」は凄まじい偉さなんだ。
弁護士事務所でも肩書きに「アソシエイツ」あれば並かな。時間当たり$200位。
でも事務所オーナーレベルか腕利きの「パートナー」とあれば$500は取られる。
業界別でも明らかに人種の片よりはある。男性でも女性でも金融系は白人が多い。
不動産会社になると中南米系、広告、マスコミ業界はユダヤ系、ビルの保守、清掃関係は
圧倒的にメキシコほ不法入国者が多い。
ある日電話会社の請求書を見て驚く。メキシコへ1時間や2時間話した請求が来てる。
皆に確認してもかけた人間はいない。
調べて見てわかったのだがメキシコ人の清掃の女性が夜にオフォスの電話を
勝手に使ってかけていたことが分かった。
すぐに清掃会社にクレームして取り返したがこんな考えられない事がおきる。
日本では考えられない事だ。
でも日本企業に白人のセクレタリーをそれでもどんどん紹介して成功させた。
それは実は全部ギリシャ系白人だたのだ。
実はギリシャ系の人間は日本人では見た目は全く普通のイギリス系やフランス系とは
区別はつかない。
実はギリシャ系の人はハンハッタンでは結構冷遇されていて給与の相場も安い。
日本の企業で働けるなんて大喜びなのだ。
ばしばし決めていった。
英語と日本語が話せる人間は相変わらず需要はあるがマンハッタンでは人材が完全に
不足状態。
人材もそれを知っててかなりの給与をふっかけてくる。
開業当初いろいろ情報を集めていてある事が分かった。
韓国人の世界に実は日本語も英語も完璧に話せる人間が多い事に気がついたのだ。
そして韓国人の世界には人材紹介業が存在していなかったのだ。
やった!俺は宝の山をあてた気分だった。
すぐに韓国世界のハングル語の主要新聞を調べデカデカと広告をうった。「アメリカ企業と日本企業で働いてみませんか」という内容をハングル語でだ。
凄まじい反響だった。朝から晩まで電話がなりやまない。オフォスには俺を入れてすでに
4人もいたがてんてこ舞いで面接を繰り返した。
韓国人の特性はとにかくよく働く。日本人どころではない。特に日本への憧れが強い。
給与が安い。週休2日だよというと「えー土曜日ほんとに休んでいいのですか?」という。
とにかく勤勉。おまけにキリスト教信者が多いので日曜は朝から教会に行く。
顔はアメリカ人からみたら日本人と全く区別はつかない。
カルティエ本社からのアサイメント(依頼の仕事)にそのなかでもとびきりの人材を
送り込んだ。即採用決定!これが俺の第一号の仕事だった。
年収8万ドルのポジションだった。我々への報酬は年収の30%だから2万4千ドル。
日本円で約300万円近くがこれ一件で儲かった。
まさに調査、取材、実行力の勝利だった。それよりも俺はニューヨークで自分の居場所が
できたという満足感があった。
さらにその後次のアイディアに取り掛かるのだった。