バンコクからダッカまで乗った飛行機は超オンボロ。
軍隊の輸送機さながらだ。キャビンは金属の骨組みが
剥き出しだ。
出発はもう3時間も遅れていた。
乗り込むとキャビンのど真ん中にでっかい飛行機の単体のジェットエンジンが
ロープで縛り付けて積んである。
その周りを取り囲むように簡素な座席が20席程取り付けてある。
こんな飛行機で大丈夫なのかと心配になった。
一緒に乗り込む乗客は軍服姿か出稼ぎ労働者。エアコンもまともに
ついていないので機内の匂いはすごい。
飛行機が離陸するためランウェイに入った。
離陸許可がおりたらしく滑走を始めた。離陸して飛行機が上昇姿勢を
取った時、貨物のジェットエンジンがロープの縛りに耐えられず
後ろへドーンと動いて最後部の壁に激突してすごい音がした。
機内は大騒ぎになった。
コクピットのドアが開き機長が見に来て真っ青になってる。
乗務員に何か指示した後に機長はコクピットに戻った。
やがて機は大きく旋回を始めた。それも傾けないようにゆっくりゆっくり大きくだ。
窓の灯りを見ていてはじめて分かった。
結局バンコクへ引き返す事になった。
その日は結局飛ばず。
次のダッカ行きは2日後になった。バンコクで足止めだった。
2日後またジェットエンジンと一緒だった。ただこの前よりロープで
がんじがらめになってる。
だれもエンジン側の席には座らない。
無事離陸し今度は荷物は動くものの危なくはなかった。
乗務員(男)がプラスティックの透明なコップに水を入れて配り始めた。
飲み水のつもりなのだろうがゴミが渦巻いていてにごっている。
そのゴミがやがて沈殿して下に積もる。
皆平気な顔をして飲んでる。驚いた。
到着は深夜の3時過ぎ。気温はこんな夜中でも38度くらい。
それも凄まじい湿気だ。まさに熱帯だ。
空港はこれが一国の玄関である国際空港なのかという位
お粗末なバラックみたいな建物。
無愛想な入国審査を受けると税関で荷物検査だ。
ここの空港は軍用空港も兼ねているので働いている連中が全員軍服姿だ。
俺が聞いていたのは必ずワイロを渡す事だ。でないと全身裸にされて検査
歯磨きのチューブまで出されてしまうという事だ。
パスポートにはさんで出すだけだ。はさんだお金だけ抜き取ってチョークで
スーツケースに丸印をさっと書いた。OKの印だった。
迎えの俺の名前を書いたプレートを見つけた。現場の運転手のアリだった。
挨拶をすませ荷物を積むと
この時間だというのに子供達が一斉に物乞いをしてくる。
バンコクと同じつもりで小銭をあげようとするとすごい勢いでアリが止めろと
制止する。
みると子供達が俺の見せた小銭を巡って殴り合いを始めた。
それも単なる殴り合いじゃない。
まるで殺し合いのような喧嘩なのだ。
バンコクでもここまでの殺気は無かった。
バングラディシュへの第一歩だった。俺の生涯を変えてしまう
驚きの旅はまだ始まったばかりだった。