実はこちらで会社起こして分かった事なんだけど
NYにはこの道何十年とかの老舗とかの長老みたいなのが
あんまりいないんだ。
皆がその分野でせいぜい5年から15年が一番多い。
ある意味初心者が入り安い土壌もある。英語と度胸さえあれば。
とにかく新規開拓しやすい。「こんなにうちはメリットがあります。
安いです」って説明するともしそれが理解してもらえたら
「よし発注しよう!」とあっさり言ってくれる。
しかしここが怖いところだ。ちょっとでもミスしたり納期を遅らせると
どんなにいい訳しても一発でキャンセル。容赦無しなんだ。
「えーこんな事で取引中止?担当者とあんなに仲良かったのに」と
あっけに取られるのだ。
チャンスはすぐに得られる。でも結果が出ないとすぐに却下。
これがアメリカなのかって自分の甘さを思い知った。
また、あるとき営業をしていて担当者が契約をしてもいいと言ってくれた。
俺は「明日朝一番契約書を持って伺いますと返事した」
翌朝電話が来た。「昨日の話はやっぱりキャンセルさせてくれ、もっといいところが
見つかったから」これで終わり。
俺は何がいけなかったのか。昨日契約してもいいといった時点でどんな紙でもいいから
肉筆で一筆仮契約書を作るべきだったのだ。
そして翌日本契約書を持っていくべきだったのだ。
連中はとにかく気が変わるし別のライバル会社のセールスも来てちゃちゃを入れてくる。
しかし一旦仮でも契約すると少々ではキャンセルはしないのだ。
これを知らなかった俺がばかだった。
日本ではセールスマンは単なる営業社員だがNYのセールスマンは違う。(女性もいる)
やり手のセールスマンはとにかく売る事のプロフェッショナルなのだ。
年収1億円など稼ぐ連中はごろごろいる。
また社会的地位も凄まじく高い。
奴らは人間心理の裏を知り尽くした心理学者なのだ。
まず自分の魅力を売り込み相手を自分のファンにしてしまう。
服装、身なり、声、話し方、表情全てがとにかく感じがいいのだ。
俺のオフィスにもよく突然アポ無しでやってくる。
助手を従えていて助手がグラフや数字が書いてあるフィリップボードを持って
いてめくっていく。指示棒で要点を説明していく。
こっちはただただあっけに取られるだけ。
大体がオフィスのOA商品が多い。
その話っぷりはまるでステージを見ているようだった。
歩きまわり、突然質問したり、笑ったりおどけてみせたりとにかく面白いのだ。
ま、いいかってサインしたこともあった。
そして例えば断るとすると今度は全く別の商品の説明が始まる。
さっきまでコピー機のセールスをしていたのが今度は浄水器のセールスに
変わるのだ。さっきのとは別の名刺をまた出す。
ほんとに笑いだしてしまう。
ほんとは仕事のじゃまなのだが俺はこの手のセールスがとても参考になるので
飛び込みセールスでも時間がある限り聞いてきた。
とにかく勉強になるのだ。
彼らは売り専門なんのだ。だからいったんこちらが買って修理や保守を
頼んでも営業は一切ケアしない。
担当部署が全く別なんだ。担当の営業マンが全てを面倒見てくれる日本とは
大違いなのだ。
しかしビジネス習慣の違いを肌で感じてNYで毎日成長して
行く自分が頼もしかったりもしたぜ。