CMフォンのスポンサーには人材派遣会社NO.1のパソナと旅行代理店HISを
はじめいくつかの会社がついてくれた。
特にパソナはNHKの取材にもスポンサー側として応じてくれた。
新聞三大紙に載るとテレビが動き、さらに雑誌が動く。最初こちらが頼んでも
取り上げてくれなかったジャパンタイムスが取材に来た。
沖縄のラジオ局の取材の申込みがあった。
俺が日本にいなかったのでニューヨークのオフィスでの電話による生出演だった。
キャスター二人がスタジオで俺に電話で話し掛けるというスタイルだ。
大手ベンチャーキャピタルの長期信用銀行とジャフコが面会を求めてきた。
しかし日本のベンチャーキャピタル(VC)の性質はよく知っていた。
長銀のVCの男は態度がとにかく尊大だった。いやな奴だったのだ。
20億円を投資する用意がある言う。
アメリカのVCはまだ生まれたばかりの発明や企業に投資し育てあげていく。
それに対し日本のVCはその発明や企業が黎明期をすぎてそろそろいけるぞって
時に現れるんだ。
要は可能な限りリスクを取りたくないのが日本のVCなんだ。
融資であれば返せば済む。しかしVCの金は返さなくていいかわりに株式の
かなりの割合を要求してくるしとにかく上場を急がせる。
さらにワラント債も欲しがる。
とにかく企業創業者とVCの争いは会社がうまく行っても、うまく行かなくても
必ずトラブルになり空中分解する様子はゴマンと見てきた。
金は出すが経営にもがんがん口を出してくる。
お金はいくらでもあれば助かる。しかし必要以上の金を集めると
非常に危険だというのが俺の教訓だ。
銀行もVCも調子のいい余裕のある会社ばかりを訪ねる。
ほんとに今開発資金や運転資金があれば必ず成功できるという
会社には見向きもしないのだ。
主要銀行が一社が融資を決定すると自分の銀行も借りて欲しいと
次から次に押し寄せる。
そしてちょっとやや経営難になったり手形を落とすのに少し金額が不足しそうになると、
銀行が「半年ごとの決算の締めを
しているので一旦今月末で返済してくれますか。
来月すぐにその分戻しますし、追加の融資もできますので」って言われ
本気にして返済すると翌月銀行は「すみません。新規の融資の決済が社内で
通らなかったのです。努力はしたのですが」とか言って融資してくれない。
一行が融資を引き上げると他の銀行も一斉に資金を引き上げようとするし
取引を打ち切ってくる。
これはVCも同じ。とにかく日本の金融機関は横並びで独自の判断する力、
将来性を見抜く目が全くないのだ。
あるのは他行の動きと担保の値段だけ。
天下のホンダだって給与遅配はしょっちゅうだったし、あの最優良企業のトヨタだって
かつて支払いが滞った時、川崎製鉄に取引を打ち切られ鉄鋼材料を引き上げられた
事だってあるんだ。今でもトヨタではその恨みを忘れていない役員はいるんだ。
どんな会社でもどんな人間でも苦しい時は必ずあるんだ。
ソフトバンクだってついに日本興行銀行との一切の取引を打ち切った。
資金の調達は銀行の融資などに頼らず株式市場での調達に切り替えたのだ。
そうこうしているうちになんと長期信用銀行が倒産したとのニュースがLAにいる
俺に電話で入った。
あの偉そうな長銀マンの顔がもう一度見てみたかった。
さらにその長銀を財務省からソフトバンクが買収した。20年前なら考えられなかった
事だ。
俺が20年前会社をやめて独立したとき、貿易の信用状(Letter of Credit)を
開きに行った時、「どうしてこんないい会社やめて独立したんですかー?」って
マジで聞かれた時は驚いた。
当時は大企業サラリーマンこそ最高で、独立して事業を起こすなど世間はまだまだ冷たい扱いしかしてくれなかったよ。
VCに口を出されるのもいやだがこのCMフォンは次のインターネット事業へのジャンプ台なのでそこまで入れ込む気もなかったのだ事実だった。
光ケーブルへのつなぎの今のADSLみたいなものだった。